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2014.07.20
 藤田嗣治(レオナール・フジタ)が1937年(昭和12年)に、制作依頼主である平野政吉の米蔵で描いた大壁画「秋田の行事」は縦3.65メートル、横20.5メートルの大きさがあり、制作当時世界一と言われた。しかも、藤田は僅か15日間という驚異的な速さ、集中力でこの作品を描き上げた。
 藤田は「秋田の全貌」を漏らさず描くという意図を持って壁画を描き、画面には昭和12年当時の秋田の冬の日常生活、夏の竿灯祭り、冬の太平山三吉神社の梵天祭り、秋の日吉八幡神社山王祭などが描かれ、人々の生き生きとした情景が描かれている。この作品が「秋田の行事」と呼ばれるようになったのは、昭和50年代以降のようである。昭和40年代発行の書籍の中では「秋田の四季」の名で呼ばれており、「秋田年中行事太平山三吉神社祭礼の図」と記述された図録もある。
 この作品の一番の魅力は、藤田嗣治が僅か15日間で描いたとは思われない作品の出来映え、完成度である。藤田嗣治は速筆で知られ、繊細な黒い線描も無念無想の気持ちで線の流れ出すままに任せて一気に描く技術を持っていたが、そのスピード感、才能が顕著に発揮されているのが「秋田の行事」である。パリ時代の乳白色の地肌、モノトーン調の画風から、中南米での2年間の旅行を経て、多彩な色彩表現へと変化し、帰国後、藤田は日本各地で「壁画」制作に挑んだが、その集大成と言えるのが「秋田の行事」である。P1010437_01 平野美術館(5月)-2
 画面に描かれた人々を見ると、人々は活気に溢れ、生き生きとしている。描かれている人物の一人一人が主役のように見える。藤田の鋭い観察力、卓越した表現力が感じられる。「秋田の行事」が展示されている平野政吉美術館の大展示室には藤田が二科展に出品した大作「北平の力士」(1935年)、「自画像」(1936年)なども展示されているが、それらと全く変わらぬ出来映えの大壁画である。
 また、画面には霊峰太平山、高清水丘陵の香爐木橋(こうろぎばし)、箱橇、馬橇、雪室、米俵、木材、酒樽、石油櫓などの秋田の風物が、まるで秋田人が描いたかと思わせるほど詳細に描かれている。
 藤田嗣治の作品には、子供を題材にしたものも多いが、「秋田の行事」の中でも雪室に遊ぶ子供たち、凧(秋田べらぼう凧)を持った子供などが表情豊かに生き生きと描かれいる。
 また、藤田は緻密な布の描写でも知られているが、「秋田の行事」においても、人々が纏う縞木綿、絣、野良着などの着物を細密に、布の質感まで描き出している。藤田は壁画制作の参考のために秋田の着物を多数購入していたとのことだ。

 「秋田の行事」の前に立つと観る者は迫力を感じる。この絵は床から約1.8メートルの位置に上げられ、両端が少しずつ迫り出して据えられている。上方からは柔らかな自然光が降り注いでいる。これらは、平野政吉が、藤田嗣治から直接助言を受けたことによるものだ。この事実は複数の新聞、書籍で明らかになっている。藤田がこの絵に最適な展示の仕方をアドバイスしてくれたのだ。(注)

 また、この「秋田の行事」を展示している平野政吉美術館の大展示室は、広さが550平方メートル、高さが4階ほどの18メートルある。この大空間で観ればこそ、迫力を感じることができるのだ。在り来たりの空間では、同様の迫力を感じることは不可能だろう。

 「秋田の行事」を始めとした藤田嗣治作品の展示に最も相応しいのは、作品の寄贈者である平野政吉が、藤田嗣治の助言を忠実に守り、建てた現秋田県立美術館(平野政吉美術館)であり、この美術館を末永く後世に伝えるべきである。



<追記> 2013.9.1
 藤田嗣治(レオナール・フジタ)作の大壁画「秋田の行事」は、8月31日、合理的な理由もなく建設された、200メートル離れた場所にある新県立美術館に移設されました。
 「秋田の行事」は、藤田嗣治と平野政吉の交友の歴史を刻んだ現秋田県立美術館(平野政吉美術館)で観るべき壁画であり、藤田が助言したこの大空間の展示室を末永く後世に伝えるべきである。


(著者注) 新県立美術館での展示では、藤田が「壁画」のために助言した「自然光」による採光形式から、人工照明(LED)に変えられています。

( 本記事は、平野政吉美術館の大展示室で観た「秋田の行事」について、記述しております。 新県立美術館における展示は、印象が異なります。 )


<参考記事>
平野政吉美術館の移転理由は何か [新規構成]

平野政吉、1955年(昭和30年)開催「平野コレクション展」での挨拶


<関連記事>
レオナール・フジタ(藤田嗣治)に大壁画「秋田の行事」を描かせた、秋田の傑人・平野政吉
藤田嗣治が語った「壁画」と、「秋田の行事」、平野政吉のトロッコ構想
藤田嗣治「秋田の行事」の構図と奥行き感、臨場感
藤田嗣治の大壁画「秋田の行事」誕生 … 平野政吉と藤田嗣治の美術館建設構想
藤田嗣治画伯の「秋田の行事」の移設は、「文化の創造」と言えるか?


<注目記事>
藤田嗣治、随筆の中で、歴史的建造物を遺すことの重要性を語る ~ 県立美術館・平野政吉美術館にも当て嵌まる言葉 ~
新県立美術館建設のコンセプト、「『秋田の行事』を再開発地区のにぎわい創出につなげたい」は、藤田嗣治が否定!~「実に、絵画を、侮辱した話」
地元紙、藤田嗣治の言葉を「秋田の行事」に誤用 ― 実は昭和10年銀座コロンバン天井画の完成の際に記述した文である。
懸念される新県立美術館での藤田嗣治「秋田の行事」の展示
「秋田の行事」引っ越し関連に、8996万円の県費支出 ― 果たして移転する必要があったのか。


<お薦め記事>
藤田嗣治の壁画「秋田の行事」が描かれた時代の背景 ~ 一体感を持つ「平野政吉美術館」




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        P1010726 平野美術館(9-14)


藤田嗣治は、壁画「秋田の行事」が完成した当時から、美術館は、自然光による採光形式にしたいという意向を持っていた。
1963年、平野政吉の親族に渡した美術館のイメージ図にも、壁画を大空間に展示し、上方から自然光を取り入れるよう描かれている。
1966年5月、美術館建設の報告に訪れた平野政吉に、美術館の屋根は採光の形式にするよう、助言している。

(参照 … 発見された「幻の藤田美術館」の設計図と、現県立美術館への藤田の助言を示すメモと手紙
平野政吉美術館(秋田県立美術館)の採光について
開催中の企画展「藤田嗣治の祈り 平野政吉の夢」 …… 「なぜ この美術館が閉館なのか?」という疑問

(2015年9月)



新県立美術館に移された「秋田の行事」を観た方々から、

以前より展示室が狭くなった。
「秋田の行事」が、窮屈で縮んで見える。
階上の左右から見ることが出来なくなった。
照明の照り返しがきつい。
2階から見ると目線から高すぎる。3階から眺めると壁画が低すぎる。
展示室に奥行きがなく、この壁画の迫力が全く感じられない。
以前は圧倒するほどの存在感があったが、この絵の輝きが失われた。
新しい建物の現代的な感じと秋田の行事が違和感ある。
あそこへ行きさえすれば、という大きな拠り所が失われた。

などの声が上がっています。
(2014年2月)





 「秋田の行事」は8月31日に、平野政吉と藤田嗣治が一体となり建てた現県立美術館(平野政吉美術館)から移設されました。これは、世界に誇れる貴重な文化遺産を崩壊させる、非常に愚かな行為であり、一秋田県民として、強く非難致します。
(2013年8月31日)




 現秋田県立美術館(平野政吉美術館)は、建物を活用を検討していながら、2013年6月30日で閉館扱いとなりました。
 平野政吉と藤田嗣治が一体になり、実現させた現秋田県立美術館(平野政吉美術館)は、後世の人々、美術愛好家、若者達、藤田嗣治ファンのためにも残すべきです。
(2013年8月1日)




 現秋田県立美術館(平野政吉美術館)の大展示室は、「秋田の行事」のためにレオナール・フジタ(藤田嗣治)が教示した展示室です。
 

 ― 藤田は、「秋田の行事」を礼拝堂のような大空間で観るよう助言し、建物の上方から自然光を採り入れ、壁画に降り注ぐよう助言しました。また、壁画を床から1.8メートルの位置に上げ、両端を少しずつせり出して据え付けたのも、臨場感を狙い、藤田がこの絵に最も良い展示方法を指示したものです。藤田の理念が強く反映されている美術館、展示室は後世に伝えていくべきです。
(2013年5月15日)



関連記事
平野政吉美術館の大展示室と藤田嗣治「秋田の行事」 ~ 永遠に

秋田県立美術館(平野政吉美術館)の閉館、大壁画「秋田の行事」展示室の閉鎖及び「秋田の行事」、藤田嗣治作品の移転について
美の巨人たち 藤田嗣治 「秋田の行事 」 ― 視聴出来なかった秋田県の方々に、一部誌上再現!
現秋田県立美術館(平野政吉美術館)に展示されている藤田嗣治「秋田の行事」



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  • 2014.07.20(06:00)|文化||TOP↑
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    昭和30年代の生まれ。
    秋田生まれ、東京都内で
    美術関連の職に就く。
    秋田市在住。
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